2008年03月16日

TOMB RAIDER : LEGEND トゥームレイダー レジェンド 日本語版 (Windows)

洋アクション・アドベンチャーゲームの金字塔(というか最長老の)『トゥームレイダー』シリーズの七作目。冒険の舞台はボリビア、ペルー、日本、ガーナ、カザフスタン、イギリス、ネパールと目まぐるしく移る。あまりにも目まぐるし過ぎて旅の目的を忘れてしまいそうになることもしばしば。物語の方はネタバレで恐縮ですが、アーサー王伝説絡みのちょっと香ばしい話。女性冒険家ララ・クロフトの身体能力はロック・クライマーから類人猿レベルにまで進化。ジャンプ周りの操作性が激烈に改善されていて、いまだかつてないスピーディなアクションが可能になっている。グラップル(電動式の鉤縄)のおかげで箱押しパズルもらくちん。転がる巨石に追いかけられるベタなトラップが復活していたのは純粋に嬉しかったが、革新的なトラップを生み出すのはもう無理なんだろうと思う。旧シリーズでありとあらゆる物理トラップを模索し尽くした感があるので。

グラフィックは中程度の解像度でプレイしても美麗。水から上がった際の肌の濡れた質感まで表現できているのはエロい。西アフリカの遺跡の荘厳な面構えは鳥肌ものだったけれど、ガーナにこんな大瀑布と巨大遺跡が実在するのかどうかは知らない。日本(おそらく東京)ステージは、映画『キル・ビル』風のヤクザな方々が大挙する勘違いニッポンになっている。ゲーム自体の難易度は、生温いにもほどがあるよ、というレベル。旧シリーズ(1〜5、悪名高い6作目だけはやっていないが)をしゃぶりつくした身としては特に。ボス・キャラクターの倒し方ぐらいかな、詰まりそうなところは。

ゲームから派生したはずの映画版の設定と、無理やり辻褄を合わせようとしているのは気に食わない。取ってつけたようなバイク・チェイスなども要らない。衛星通信で随時仲間と連絡を取り合っているのだけれど、外野のお喋りがうるさすぎて「巨大遺跡にひとりぼっち」の孤独感が無くなってしまっている。まあしかしマンネリ化でもなんでも、インディ・ジョーンズ先生が墓場から蘇生するまでは現役でいてもらわないと困る。今月末にようやく四機種同時発売になる『トゥームレイダー・アニバーサリー』(初代のリメイク)は謎解きのアレンジだけが少し心配。
posted by Gibika at 00:45| ゲーム

2008年03月14日

SHADOW OF ROME シャドウ オブ ローマ (PS2)

廉価版をいまさら購入。古代ローマを舞台にしたアクション・アドベンチャーゲームで、実在の英雄アグリッパとオクタビアヌスを交互に操り、ジュリアス・シーザー(カエサル)暗殺の真相を暴いてゆくという内容。若き日のアグリッパはとある事情から剣闘士に身を落とし、コロッセウムで催される闘技会に参戦する羽目に。その一方でオクタビアヌスは情報収集のため元老院に潜入する。

コロッセウムでの残酷殺人ショーに熱狂するお馬鹿な群集を上手く描けた作品で、ハリボテのCGだとは分かってはいるのに、かなりの臨場感が味わえる。観客を魅了させるような戦い方を知らず知らずにのうちに体得できるゲーム・システムがよく出来ている。命乞いをする敵もあれば、恐怖のあまり失禁してしまうような敵もあり。無慈悲に叩き殺せば観客が歓喜する。漫画『ベルセルク』を彷彿させる大型剣での兜割り、トゲ付き巨大鉄球による叩き潰し攻撃の爽快感は異常。改造コードを用いれば更に「大変なこと」になるようだけれど、面倒臭いのでやっていない。

オクタビアヌスのパートは血みどろ闘技会の息抜きのような雰囲気で、潜入ものとしては本当に初心者向きの難易度だけれど、バナナの皮やカエル等のお笑い系アイテムを充実させていけば独自の方向性を築けそうな感じ。終盤の「虎穴に入らずんば〜」の場面は緊張感に溢れていて良かったなあ。週末2〜3日程度で攻略できるようなお手軽な内容で、巷の大作ゲームに疲労を感じはじめた自分にとってはちょうど良いボリュームだった。物足りなければ映画『グラディエーター』ではなくって『スパルタカス』でもご覧になればいかがか。
posted by Gibika at 01:16| ゲーム

2008年03月13日

若竹七海 『バベル島』

ホラー作品集と呼んでしまってよいものかどうか悩む。シンプルな怪談もあり、心理的なホラー・サスペンスもあり、明快なオチのあるブラック・ジョーク風の小品もあり、オカルト・ネタを絡めたミステリーもありで。ハズレ無しとまでは言わないけれど、ちょっと良いなと思える小品が幾つか在って。ただ基本的に後味の良い作品はほとんど無い(例外は多少ある)ので注意が必要。

ほんのり横溝テイストな旧家にまつわる因縁話『のぞき梅』。幽霊が出没するという噂のビルディングを舞台にした『上下する地獄』は、ブラックを通り越して悪趣味なシック・ジョークすれすれのような気がする。悲惨な状況に陥る人物がとりたてて極悪人というわけでは無いから。開かずの間から消失する招き猫を描いた『招き猫対密室』は、多視点が交錯する凝った構成と、悪意にまみれた嫌ぁ〜な結末が印象的。本作中で一番ミステリー色が濃い作品だったかな、と。表題作『バベル島』は、イギリスのウェールズ出身のちょっと頭のおかしい金持ちのボンボンが、離れ小島を買い取って、バベルの塔がごとき巨大な塔を建設する話で、壮大なスケールの割に頁数があまりにも少なくて欲求不満に。登場人物を増やして長編で読みたい感じの一作。ほのぼのとしたカバー絵が作品内容といまいちマッチしていないのは残念。巻末の千街氏による解説は非常にコンパクトな若竹作品論、しいてはオカルト・ミステリー論になっていて、賛同できる点の多い名文だった。
posted by Gibika at 21:16| 小説

2008年03月04日

佐飛通俊 『アインシュタイン・ゲーム』

大正時代に来日したアインシュタイン博士が関西で巻き込まれていたかもしれない猟奇事件、には物凄く興味を引かれたが、話の重点は実はそちらには置かれておらず、メインは誰が相続しようが知ったこっちゃないような遺産相続をめぐる殺人事件のほうで、どうも看板に偽りがあるような気がする。「物質の瞬間移動は可能である」と豪語する変な男(科学者ですらなくてホテルのオーナー)が現れて、バカミスのような展開になるのかと思いきや……何なんだろうこの煮え切れなさは。トリック自体も新本格あたりで既出のものではないだろうか多分。ギャグとドタバタが読みどころ、と言うわりにはあまりドタバタもしておらず中途半端な印象。奇人変人を一堂に集結させたのなら、いっそ話の収集がつかないくらいのハチャメチャ大騒ぎにしてしまったほうが楽しいだろうに。というわけで個人的にバカミス未遂作品に認定済み。雑学の薀蓄がくどくないところが唯一の誉めどころ、かな。
posted by Gibika at 18:25| 小説

2008年01月31日

梅原克文 『サイファイ・ムーン』

月夜をテーマにした連作中短編集。将来を期待されていたはずの陸上選手の自殺の真相が暴かれる『冬人夏草』。万葉集の歌人・柿本人麿に関するとんでもない事実が明らかになる伝奇ホラー調の『人麿異聞』。この世のものならぬモノが見えるようになってしまったプロボクサーの死闘を描いた『胡蝶乱武』。表題作『科幻月輪〜サイファイ・ムーン』では前三編の主人公たちが一堂に集結して、さぞかしスケールの大きい展開になってゆくのだろうなあと思っていたら、ご近所レベルの小事件に終始してしまって、ちょっぴり拍子抜け。○○の存在だとか、異端科学者のトンデモ学説を真面目な顔で引っぱり出してくるセンスは結構好きなんだけれど。ボーナス・トラック風に最後に添えられた一編『アルジャーノンに菊の花を』は、有名すぎる元ネタ作品から主題部分だけを奪取して、大胆なアレンジを加えた低俗かつブラックな肌触りのホラー・サスペンスで、これはこれで面白いのではないかと。著者は後書きで大衆娯楽作家宣言をされているけれども、確かに頭でっかちのSFオタクには書けない類の、通俗SFホラー小説の鑑(かがみ)のような作品ではあったよ。
posted by Gibika at 21:08| 小説

2008年01月18日

山田正紀 『サイコトパス』

これはサイコ・サスペンスの怪作、いや傑作か。男性刑事との援助交際を続ける女子高生探偵を描いた作中作の『援交探偵』シリーズ。猟奇殺人と不可能犯罪、人を食ったようなとんでもないトリックがてんこもりの内容で、お世辞にもリアリティに溢れているとは言い難いけれど、なんとも言えない妖しい魅力に溢れている。耳姦春男(みみかしがましはるお)や口唇言葉子(こうしんことのはこ)といった奇ッ怪なネーミングの登場人物たちに翻弄され、論理的な思考を嘲笑うかのような信じられない新事実が次々と明らかになって、女性推理作家である主人公の精神状態にビシビシと亀裂が入ってしまう。ただでさえ現代日本が舞台であるという感覚が希薄なのに、終盤になるとほとんど異次元空間を彷徨っているかのような(としか形容できない)不安な心地で、確信犯的にお下品で猥雑なムードも良かった。後書きで著者自ら類似性を指摘されている某海外映画監督のあの映画よりも、こちらの小説の方が遥かに面白いと思う。謎が謎を呼ぶ不条理迷宮サスペンス映画ばかりを撮り続けている巨匠のあの作品よりも。
posted by Gibika at 19:29| 小説

2008年01月14日

梶尾真治 『OKAGE』

小学生の兆(きざし)君は『トルネコの大冒険』が大好き。そんなある日、彼はゲーム中のモンスターであるスモール・グールに良く似た謎の生物に遭遇する。幻獣は彼に何かを伝えたがっているようなのだが……。時を同じくして全国各地で小学生が集団失踪しはじめる。これは現代のお陰参りなのか、それともハーメルンの笛吹き男のようなものなのか、というお話。

終末もののホラーで怪物ホラー小説。個人的にはトルネコ・ハルマゲドン・ホラーと呼びたい。著者のホーム・グラウンドである九州は熊本の風土が丁寧すぎるほどに書き込まれていて、ひたすら長い。母親と子供たちの描写はひたすら巧い。世界の終末を予兆させる、常識外れの怪現象の数々はひたすら不気味。ゾンビ集団との追いかけっこのくだりは、著者のスラップスティックな特性が悪い方向に発揮されていて、怖いというより微笑ましい。ダンベルで武装したレオタード女ゾンビに恐怖心を抱く読者も少なかろう。スピリチュアルな事象が全肯定されるだけの結末には物足りなさを感じた。どちらかというと少年漫画向きの内容だと思える。怪物描写の巧い漫画家さんにぜひとも漫画化してもらいたい(実写映画化だけは勘弁して)。作中で『トルネコの大冒険』(おそらくスーファミの初代)がここまで大々的にフィーチャーされた小説も他に無いだろうと思えるので、往年のチュンソフト・ファンは必携の一冊、ってほどでもないか。
posted by Gibika at 04:00| 小説

2007年12月22日

保科昌彦 『ゲスト』

ゲーム業界とその近所を舞台にした長編ホラー。主人公がゲーム専門のシナリオ・ライターで、その嫁さんがパート勤めのゲーマーという設定が妙に生活感に溢れていた。夫婦喧嘩の場面もやけに実感がこもっていた。ガチガチのクリエイター肌ではない、自分の仕事にあまり自信が持てないタイプのアンニュイな主人公に親近感がぐっと上昇(何故?)。お話の方は、肝心のオンライン・アドベンチャー・ゲーム「ゲスト」と心霊ネタの関連性が貧弱やなあ、と。悪意と暴力がどんどん拡散していく様子を描こうとする意図は理解できるんだけど、登場人物の視点が散漫かなあ、と。中途半端な群像劇のような按配で、刑事の視点とか、喫茶店主の視点などは本当に必要だったのか疑問。ただ、閉じていないタイプの結末なので、登場人物(感染者)さえ増やせば延々と話を続けられそうな雰囲気ではある。それこそ人類が滅亡するまで無限ループ。地味なんだけど筆力のある作家さんなので次作にも期待(既に新潮社から新刊が出ているらしい)。
posted by Gibika at 22:58| 小説

2007年12月21日

浅暮三文 『ラストホープ』

金庫泥棒がゲットした一億円をめぐる争奪戦の渦中に、釣具屋の中年凸凹コンビ(引退した宝石泥棒)が巻き込まれていくという、コメディ・タッチの犯罪小説。ひたすら騙し合いとドタバタ劇に終始しているような印象だけれど、なかなか面白い。故意に登場人物たちの一部にモザイクをかけているような描写が続いて話が見えにくいが、最後まで読むとこれが必要不可欠なモザイクであったことが納得できるようになる。終盤の登場人物総出の追跡劇と混戦っぷり加減がとにかく読んでいて楽しい。とある小動物(けっこう重要)も大活躍。また、釣りと犯罪との関連性がどのようなかたちで浮上してくるかといった点も読みどころ。ただ、釣り好きとしても有名な著者自身によるフライ・フィッシング用語解説がマニアックすぎるきらいはあった。物語のオチのつけ方がなんとも粋な感じで後味も爽快、久しぶりに心が晴れわたるような一冊だった。
posted by Gibika at 00:16| 小説

2007年11月18日

黒武洋 『パンドラの火花』

近未来サスペンス長編。凶悪犯罪で死刑判決を受けた死刑囚が、時空移動システム(要するにタイムマシン)で過去へ飛び、タイムリミット以内に過去の自分を説得して犯行を止めることが出来れば、無罪放免になるという設定。歴史に残るような大事件でなくても、人の生死に関わるような過去を改変してしまうと、変化が積もり積もって現代そのものがグチャグチャになってしまったり、過去が枝分かれしてしまったりする危険性があると思うんだけれども、そのへんの説明がテキトーすぎないかな、本書。タイム・パラドックスなんて言葉は作者の辞書には載ってないみたいだ。説得の方法と過程と結果がケース・バイ・ケースで、そこだけは興味深かったし一気読みも出来たんだけど、話の締め方があまりにも乱暴すぎる。伏線も何もないままに登場する都合の良すぎる黒幕と、主人公(?)のラストの決め台詞の格好悪さにも脱力。
posted by Gibika at 00:05| 小説